根室海峡に伸びる日本最大の砂嘴・野付半島。その半島が作り出す野付湾にのぞむ地区・尾岱沼では、ホッカイシマエビ(標準和名:ホッカイエビ)漁が夏と秋に行われ、野付湾の風物詩となっている。シマエビと呼ばれる由来は、特徴的な白いしま模様にある。緑褐色の体に白いたてじま模様があり、茹でると緑褐色だった部分が鮮やかな紅色に変わる。すると、紅白のしま模様になるため、縁起物としておせち料理などにもよく用いられている。
ホッカイシマエビが水産資源として着目されたのは、近代になってからだ。古くから鮭・鱒と鰊が中心だった根室沿岸地域の漁業は、明治半ば以降、資源がしだいに枯渇し不漁が続いた。1891(明治24)年には鮭・鱒の人工ふ化事業に着手していたが、すぐに成果は得られなかった。西欧諸国と肩を並べようと国を挙げてまい進した明治期にあって、根室沿岸地域でも、鮭・鱒と鰊漁を補う新たな産業の確立が求められていたのである。
そこで注目されたのが、ホタテ、コンブ、そしてホッカイシマエビだった。野付湾ではもともと自給的な漁が行われていたようだが、明治後期からは、水産資源として盛んに水揚げされるようになった。