鮭の聖地エコミュージアム構想12のエピソード

Episode03 根室海峡のオホーツク文化

根室地方では6世紀から9世紀にかけて、北海道独特の古代文化であるオホーツク文化が展開しました。大陸の影響も認められるその文化は、日本各地のあらゆる時代の文化と比べても異彩を放っています。オホーツク文化の担い手は海洋航海術に長けた人々で、海洋資源に恵まれた世界自然遺産知床や北方四島周辺で、アザラシなど海獣類の狩猟や漁労を営んでいました。最盛期には千島列島までその活動範囲を広げていました。

オホーツク文化は、その最盛期である6~7世紀には千島列島最北の占守島まで活動範囲を広げた古代北方文化です。標津町の「三本木遺跡」は、オホーツク人の根室海峡沿岸進出初期の頃の集落遺跡で、標津川河口付近の海岸砂丘上に残されています。

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三本木遺跡(提供:標津町教育委員会)

オホーツク人の暮らしは海獣狩猟や漁労を中心にしていました。「根室半島のオホーツク文化出土品」にはオホーツク人の捕鯨の様子が線刻された針入があり、海獣狩猟の様子を想像できます。シャチや熊、フクロウ、アザラシなどを象った彫刻品も出土しており、動物への特別な思い入れがあったとみられています。羅臼町の「松法川北岸遺跡出土品」の中には「熊頭注口木製槽」という木製の容器があります。これは容器の一端に熊の頭が精巧に彫刻されており、口は貫通孔で注ぎ口となっています。そして容器の口縁にはシャチの背びれの線刻が施されています。容器を伏せているときは熊の頭が、容器を使用するときはシャチの背びれが、それぞれ正しく向くようにつくられているのです。

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根室半島のオホーツク文化出土品(所蔵:根室市教育委員会、撮影:佐藤雅彦)

後のアイヌ文化では、熊は山の神キムンカムイ、シャチは沖の神レプンカムイとされており、オホーツク文化の精神文化がアイヌ文化に影響を与えていることを知ることができる資料としても貴重です。

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三本木遺跡(提供:標津町教育委員会)

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根室半島のオホーツク文化出土品(所蔵:根室市教育委員会、撮影:佐藤雅彦)