「野付半島」の目前に望む国後島。その距離はわずか16kmほどで、野付半島は古来より、国後への渡海拠点として機能してきました。古代から江戸時代に至る数々の史料から、野付半島を経由して人とモノが行き交い、海峡を挟んだ両岸で育まれた一体の文化の存在を知ることができます。さらに国後島の先に連なる千島列島を通じて大陸ともつながり、異文化接触の入口にもなっていました。そこには人と文化がつながる「道」の存在が浮かび上がってきます。
眼前に国後島を望む根室海峡の沿岸中央部に特異な形の半島が突き出ています。全長28kmに及ぶ日本最大の砂嘴「野付半島」です。立ち枯れた樹林の光景は最果ての地を連想させます。しかし野付は、古代北方文化の時代から江戸時代まで国後島への渡海拠点となり、千島列島を通じて世界に開かれた日本の東門の役目を果たしてきたのです。野付を介した交流は「メナシ」と呼ばれる文化・経済的に一体の地域をここに築きました。